第1編 物質の状態

第2章 物質の三態と状態変化

1粒子の熱運動 

2物質の三態と状態変化

 
 粒子の熱運動

拡散と粒子の熱運動】

同じ圧力の空気と臭素をコックで分けた別々の容器に入れ,コックをあけて長時間放っておくと,容器の中は両方とも空気と臭素が同じ割合の混合物になる。この現象を〔 拡散 〕という。拡散が起こるのは,物質を構成している粒子が,その温度に応じた運動エネルギーをもっていて,絶えず運動しているためである。この運動が〔 熱運動 〕である。

(注意)粒子の運動エネルギーは,E=1/2mv 2で表される。粒子は空間をいろいろな方向で飛び回り,衝突し合い,その速度vは絶えず変化している。そのため,粒子はさまざまな運動エネルギーをもち,全ての粒子が同じ運動をしているのではなく,その温度で決まった分布で運動している。温度が高くなると,高い運動エネルギーをもった分子が増え,分布全体がエネルギーの大きい方へ移っていく。

 
 

【気体中の粒子の運動と圧力】

容器に入れた気体は,熱運動によって容器の壁に絶えず衝突する。このとき,壁が受ける単位面積あたりの力を気体の圧力という。また,温度が高いほど,気体分子の熱運動が大きくなり,壁に衝突する分子が多くなるので,気体の圧力は大きくなる

大気が示す圧力(大気圧)は右図のように一端を閉じたガラス管に水銀を満たし,これを水銀の入った容器に倒立させると,水銀柱は760mmで止まる。このとき管の上部は,ほとんど真空となるので,容器の水銀面にはたらく大気圧と760mmの水銀がつり合ったことになる。これを1気圧〔atm〕と定義している

1atm = 760 mmHg = 1013 hPa = 1.013×105 Pa 
 


例題

一方を閉じたガラス管に水銀を満たし,水銀を入れた容器中に倒立させると,大気圧1013hPaのとき,右上図のようになった。25℃でエタノールの蒸気圧を65mmHgとして,次の各問いに答えよ。

(1) 少量のエタノールをガラス管に下端から注入すると,水銀柱の高さが変化した。さらにエタノールを加えていくと,水銀
 柱の高さがhmm〕で一定になった。25℃,1013hPaのとき,hはいくらになるか。


(2) (1) の実験で,大気圧が810mmHgであれば,水銀柱の高さhは何mmになるか。

(3) 25℃で水銀の密度は,水の密度の13.6倍である。水銀の代わりに水を用いると,1013hPaでは何mの水柱に相当するか。

 

(1) 76065695mm〕 (2) 81065745mm〕 (3) 76×13.6×10210.3m〕